coalamogu

~農家一年生とゆかいな仲間たち~

前夜祭

なんだかんだで早一年。時が経つのも早いものである。

去年産声をあげた我が子ももうすぐ4か月。

あれからいろいろあって、現在は神奈川の実家に身を寄せている。

その「いろいろ」についてはまたの機会にお話することにして、

毎日すくすく育っている我が子についてお話しよう。

初産はよく予定日を過ぎると聞くが、例に倣って私の場合も予定日を1日過ぎていた。

妊娠後期に入るとスイカのようにパンパンに膨らんだおなかに押しつぶされそうになりながら寝苦しい夜を過ごしていた。力強く私を蹴る我が子にいじめられた私の膀胱は悲鳴をあげ、夜中は2~3時間おきに目が覚め、トイレへ駆け込んだ。

予定日の1週間前ごろからだろうか、前駆陣痛なるものが来ていて今か今かと陣痛がくるのを待っていたが、期待とは裏腹に徐々に痛みは遠のいて行った。

その日、朝から鈍い痛みはあったものの、強まる様子はない。健診で診てもらった先生も「子宮口がまだ開いてないから、もう少し時間がかかりそうね~」とのんきにやり過ごしている様子。夫と二人肩を落とし、気分転換にコメダ珈琲で一杯やることにした。

テーブルにある紙ナプキンに我が子の名前候補を書きながら「あーでもない。こーでもない」と笑い合う。体重を気にして甘いものを避けていた私だったが、この時ばかりは名物のシロノワールに舌鼓。至福の時を過ごした。

数時間後に訪れる壮絶な痛みのことなんて知る由もなく・・・。

 

 

 

シュガーモンスター

「味どうらくの里」

県内の名産品。一からだしをとり、お醤油、お酒、みりんなどで味を調えることができないばあちゃんにとっての必需品。スーパーで安売りされようものなら、チラシ片手に血気盛んにスーパーへ向かう。

味どうらくの里は簡単に言えばめんつゆの素。薄めて使うように書いてあってもばあちゃんはお構いなしにドバドバ鍋につぎ込んでは砂糖まで入れる。だからいつも何を煮ても同じ味がして甘い。また、そのままお醤油として使うこともしばしば。

薄味派の私と夫はばあちゃんの濃い味攻撃に嫌気がさした。そして、どちらかというと我々派のじいちゃんも年のせいなのか、何なのか日に日に痩せていっている気がする。正しく使えば美味しいものも、分量を間違えれば大変である。

まさに薬同様容量、用法を注意すべきである。

そこで考えた、味覚は一体どこで形成されるのであろうか?

なんと、人間の味覚は生まれる前から形成されるらしい。胎児の2~3ヶ月には、口腔内の構造が完成し、味蕾(味を感じる小さな器官)もでき、母親の羊水に含まれるものを味として感じているのではないかと言われている。そして、生まれてから3歳ころまでには味覚が完成するとのこと。この期間にあまり濃い味に慣れ過ぎてしまうと感覚が鈍ってしまい、どんどん濃い味を求めるようになるらしい。

ということは、うちのばあちゃんの異常な甘党は幼少期には完成していたとのことだ。どうりで超甘党歴80年には太刀打ちできないはずてある。

今のおなかの子はまさに3ヶ月目に突入。ということは味蕾もできているころだ。ばあちゃんみたいな「シュガーモンスター」にならないためにも薄味の食事をとることにしよう。悲劇は繰り返してはならない。

緑色の天国

私たちは再び野を越え、山を越えていた。

叔父同伴の元、私たちは大都会へ急いでいた。

そう、「秋田市」である。

「秋田には大曲よりもっと大きいイオンがある」「ドンキもあるよ」という言葉に心躍らせていた。どう考えても元都会人とは考えにくい行動である。

それはさておき、途中道の駅で休憩を取りながら約2時間、ついにそこへ到着した。

「イオンモール秋田」

大曲のイオンが2階建てなのに対し、なんと一階多い3階建て!そして、専門店の数も1.5倍ほどあっただろうか。お決まりの「チチカカ」「カルディ」「GU」「ヴィレバン」をはじめ、「未来屋書店」「ユニクロ」それに「LUSH」まである。が、その中でも私が一番感動してしまったのは「SUBWAY」だ。あの緑に縁どられた白と黄色の6文字を見た瞬間、熱いものがこみ上げてきた。

東京にいたころ、職場近くにサブウェイがあった。手ごろな値段で野菜もたっぷりとれる。しかも野菜大盛りは無料である。なんとも良心的。また平日のセットも健在で、サンドウィッチとドリンクのセットで500円。単品で買うと400円~ドリンクも単品ならSサイズでも160円するからこれで数十円はお得になる計算だ。

下手なお弁当を買うよりよっぽどボリュームもあるし、栄養バランスもよい。同じ職場の常連さんはサブウェイのベジーデライトを購入し、コンビニで購入したサラダチキンを挟んで食べる簡単アレンジをよくやっていた。それを聞いた瞬間初めてその人を尊敬した覚えがある。なんというアイディアマンだ!

そして、何より私が心から欲しているパンなのだ。毎日続くばあちゃんのごはん攻撃に嫌気がさしてきたころなので、本当に嬉しかったのである。

無心でサンドウィッチをほおばる嫁をまっすぐ見つめる夫。時刻は午前10時半。まだお昼にもなっていない。ブランチ感覚のSUBWAYだった。

もちろんそのあと、お昼頃にはふつうにランチ。しかもバイキング。デザートもしっかり食べて帰ってきた。夫は自分で焼くことができるワッフルの種をあふれんばかりに機械にもったため、中途半端に焼けた状態で誇らしげに持ってきた。ドライフルーツを添えて。カスタードやフルーツソースで勝負するのではなく、素材そのもので勝負したかったらしい。本物が分かる男である。

ちなみに、帰り道にかの有名な「河辺ドライブイン」によって帰ってきたが、この話はまた別の機会に。

 

 

夢のピザトースト

以前、こっちの人の「たばこ」好きを紹介したが、暇さえあればお茶っことお菓子片手にお茶している。

ただ、町中を見渡すとカフェは見当たらない。どうやらこっちの人はお家でお茶するのが好きみたいである。

大のベローチェ好きだった夫は暇さえあればベローチェに平気で何時間も居座っていた。ところがここにはベローチェはない。ドトールもない。エクセルシオールもない。サンマルクカフェもない。星乃珈琲もコメダもモリバもイタリアントマトもない。そしてスタバは一大スペクタクルまで車で30分走らなければない。

いわゆる大手カフェチェーンと言われるものがすぐ近くにないのだ。夫からすれば、吉幾三ばりに「オラこんな村嫌だ~♪」と歌いだしたくなる勢いである。

ところが最近夫が上機嫌である。新たな憩いの場を見つけたのだ。

それはスーパーに併設しているカフェスペース。

人口がそう多くない割には巨大スーパーが乱立している。

あまり首都圏では聞かない「よねや」「バザール」「ビフレ」「グランマート・タカヤナギ」をはじめ「イオン・スーパーセンター」など、たったの数キロ圏内に5軒もある。ちょっと足を延ばせば「イオン・ザ・ビッグ」や「業務スーパー」まである。道の駅や農産物の直売所を加えればここは食のパラダイスだともいえるだろう。

そして、これらスーパーには必ずと言っていいほどパン屋とカフェスペースが併設されている。大手カフェチェーンより安くコーヒーは飲めるし、おいしいパンだってある。

妊娠中の妙な私の趣向の変化により、常に心からピザトーストを欲している。夢にまで出てくる。ここまで来ると、もしかして生まれてくる子供は鼻の高い金髪のアメリカ人なのだろうか?と疑いたくもなる。ところが、米農家であるこの家でライバルのパンにケチャップ。それにばあちゃんの大嫌いなチーズを乗せて焼くなんてご法度。この欲を私はスーパーで晴らすしかないのである。

というわけで買い出しは私たち夫婦が一手に引き受け、スーパーで心行くまでピザトーストを食べ、お茶して帰るのが定番となった。

一大スペクタクル

東京でショッピングといえば

新宿なら伊勢丹

表参道ならラフォーレ

渋谷なら109

銀座なら三越

このあたりでショッピングと言えば、

「イオンモール大曲」

40を超える専門店と映画館、フードコート、スーパー。それにホームセンターが併設されている。スタバやヴィレバン、カルディーまで出店している。はじめて訪れたときは思わず「ひゃほーい」とスキップでもしそうな勢いだった。もちろん、人目があるため、実際に行動には移していないが・・・・

先週マイカーが納車されたとき、「これで大曲のイオンまで行けるね!」と祝福されたくらいだ。それだけ、ここのあたりの人にとってこのイオンはすごい施設なのである。

数ある店舗の中でも一番のおすすめは「チチカカ」。

ご存知の方もいらっしゃると思うが、

「チチカカ」は「中南米をはじめとした遊び心あふれる服と雑貨で、毎日をカラフルに、世界を幸せに。あなたといっしょに、このカラフルな地球から」をコンセプトにしているお店である。かわいいアルパカのマークが目印。

東京にいたころはどちらかというとモノトーンの恰好をすることが多かった。

ところが、この雪国の寒さにやられ、日ごろから帽子にレッグウォーマー、タイツにボアのベストを手放せなくなった。そこで大活躍だったのが、チチカカ。

はじめのころは上下スキーウェァにマスクと帽子。おまけに眼鏡が温度差で曇るため、町中で見かけたらまるで変質者である。その点、チチカカのお洋服は手ごろな上にかわいく防寒することができる。冬物セールを開催していたのも相まって、通常の半額以下の値段でかわいいものを仕入れできた。たとえば、ウール素材のベスト4000円、ニット帽1000円。これなら急な来客でも、変な目で見られずに済む。

防寒具のつもりで購入した洋服だったが、気づけば家の中で夫と二人ポップな色使いの「山ガール」である。

この前、ドライブ好きなじいちゃんを引き連れイオンへ向かった。

例のごとく一目散にチチカカへ向かうとミーハーなじいちゃんもピンクを基調としたポップな洋服や雑貨をもの珍しそうにみていた。いつも寒そうにしているじいちゃんに帽子を提案すると喜んで選びはじめた。そして一点購入。タグをその場で切って被って帰った。それからというもの、お出かけの時はもちろん、家の中でも冷え込む日はチチカカの帽子を手放さない。

というわけでここ秋田のど田舎でも、中南米の雰囲気あふれるファッションで夫とじいちやんと私は毎日を過ごしている。

 

虫に優しく

自然ゆたかな山里
虫たちも精一杯生きてます
迷い込んだ虫たちを網でやさしくすくってあげてください

あいいの温泉鶴ヶ池荘の露天風呂にある注意書き。その脇には虫取り編みがかかっている。なんと、人だけでなく、虫にまで優しい。
湖畔の脇にあるこの温泉は冬こそ湖面が凍ってお虫様の来客はないものの、夏場に行けば迷い込む虫もいること間違いない。

私またさんないにいた。
目的は例のオセンではない。温泉だ。

かつてはここで鶴が養殖され、鑑賞されたとの古記のころから「鶴ヶ池」という名称が存在したらしい。また、江戸時代の紀行家も「鶴ヶ池」を句に詠んでいる。

露天風呂からはこの鶴ヶ池が一望できる。
晴れた冬の時期は、雪景色と湖と青空が素敵なコントラストを醸し出している。
湖は車での一周できる。もちろん対岸から入浴中の人々が「丸見え」にならないように目隠しがあるので、ご安心を。

入湯料は500円。シルバーは300円。
このあたりはどうやら500円が相場らしい。有料の休憩所、お食事処、無料の休憩ゾーンもある。宿泊施設も併設されている。敷地内の直売所「山菜恵ちゃん」では地元の農家さんが手塩にかけた農産品が販売されている。
以前ご紹介した「いぶりがっこ」が何種類お並ぶ。塩加減やいぶし方によって味わいが変わってくる。どれも試食ができたので、口に運ぶと見た目は変わらないのに、風味が全くちがうことに驚いた。

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周辺にはたくさんの温浴施設が並ぶ。
一軒一軒しらみつぶしにしていこう

鼓動

「あー、元気に動いてますね」

近所の産婦人科の診察室の画面でパチパチと点滅するわが子の心臓を差しながら先生は語った。
足を全開に広げ、恥じらいをよそに食い入るように画面を見つめた。

「はじめて見た時は感動して涙が止まりませんでした」

などの体験談を風の噂で聞いていたが、涙はおろか、私は画面を見つめてはただ「ほーっ」と発するだけ。

あとに2~3週間すれば、出産予定日が確定するんでまたきてくださいと先生。

診断結果、妊娠7週。

旅行会社で働いていた頃、ストレスと不規則な生活がたたってか、原因不明の吐き気、めまい、頭痛に一年ほど悩まされた。
パソコンの画面を見ていると気持ちがわるくなり、見ていられない。まるで船酔い状態。食事も喉を通らず、げっそりと痩せこけた。内科へ行っても、胃カメラ飲んでも原因不明。最終的には心療内科を紹介され、めまいや血圧、吐き気や不眠やらに効くとされる薬を大量に処方された。そして、行くたびに薬は増えて行った。

だが、飲み続けても、一向によくならず、病院へ行くのが面倒になった私は行くのやめた。

病院に通うのは元気と根気がいる。

薬をやめてから程なくして嘘のように私の体調はみるみる良くなった。

内科の先生が見立てた通り、どうやら「精神的な」ものが原因だったらしい。
そう思うと、あれだけ薬漬けだった私が子を授かったのだから実に感慨深い。

夫は研修生として手当ては出るものも、現在私は無職。今までの4分の1の収入で年金や保険、税金を納め、おなかの子を育てて行けるか不安がよぎった。
けれども、「やるしかない、やるしかない」とエコーの写真を握りしめた。

早速帰ってばあちゃんに報告すると、
「猫に襲われたら大変だから、赤ちゃんオリにいれないと!」と冗談を飛ばす。
新人妊婦の心配をよそに、高らかと笑うばあちゃんだった。