coalamogu

~農家一年生とゆかいな仲間たち~

リベンジマッチ

さんない方面へ向け車を走らせていた。

この前の吹雪と打って変わって快晴。
途中の澄んだ渓谷や穏やかな川の流れを横にぐんぐん進んでいく。
陽に当たってキラキラ光る雪は幻想的。
勘の良い方はもうお気づきだろうが、今日も例の目的地を目指していた。
スーパーオセンである。

叔父がスキーで出払っているため、慣れない夫が運転手。
たが、じいちゃんという心強いナビがいる。

ベストタイミングでの右左折の指示、バックの時は必ず「オーライ」と声かけ。
目標となるランドマークの解説。そこら辺のナビよりよっぽど高性能である。

山道を走ること1時間、到着した。

9時に開店するやいなや、客がどっと押し寄せる。
店内で流れる「軍艦マーチ」が購買意欲を掻き立てる。
早速鮮魚コーナーへ。

今日の目玉は大きなサバまるまる2匹。198円。
ほかにもイワシ6匹、150円。
家族六人分一気に買い込む。
1コ、2コ、サンコンと次々と買い物カゴがいっぱいになっていく。
ここまで思い切り買い物できるとすがすがしい。大人買い
オセンの中でも野菜を販売しているが、外で販売している野菜や果物が安い。
たとえば人参約20本ほど入って410円。
傷がついていたり、訳ありとはいえ、
しっかりとした太さで、ビビッドはオレンジ色をしている。

今日の戦利品一覧

鶏ムネ1kg 350円×2
鶏ひき肉×4 94円、90円、92円、99円
ブリの切り身3コ×3 398×3
あさり×3 254円、256円、284円
いわし6匹×4 150円×4
豚ひき肉×2 168円、173円
魚のアラ(タラ)×1 150円
魚のアラ(サケ)×2 198円×2
あじの干物4枚×2 350円×2
サバ2匹×3 198円×3
手羽元8本入り×2 296円,236円
豚バラスライス×3 333円×3
しいたけ×3 90円×3
油揚げ5枚×2 65円×2
お豆腐3コ×3 95円×3
こんにゃく×1 128円
ヒレカツ弁当×2 250円×2
サケ弁当×2 250円×2

締めて9944円。参った。
安い。

帰りに湯田牛乳へ立ち寄り。
湯田牛乳はオセンから車で10分くらいの距離にある。
「プレミアム湯田ヨーグルト」がおすすめ。
岩手県産の生乳に生クリームを加え、口に入れたときのふわふわとろとろの食感を実現。一度口にしたら忘れられない味になる。
これをお土産に仕入れ、勝利の余韻に浸りながらじいちゃんの好物、ソフトクリームを堪能。

ソフトクリーム 250円×3

店内では牛乳、ヨーグルトはもちろん、プリンや牛乳寒天、パンなどの販売もしている。冬季はほっとカフェオレも味わうことができる。

身も心も満たされて、家路についた。

フェアリーテイル ~vol2~

その弐、ポテトサラダ

ばあちゃんが一度料理をすると大変なロットを作る。来る日も来る日もそれが食卓に並ぶが、結局誰も手を付けず、残飯行き。

その代表例がポテトサラダ。

自家製のじゃがいもを大なべ一杯ひたすら茹でる。「もうこれ以上耐えられません」とじゃがいもが音をあげるくらいぐちゃぐちゃになってきたらお湯からあげ、潰してシーチキンとマヨネーズを加える。ここまで良いのだか、フィニッシュに砂糖とりんごを加える。砂糖の量は例のカレーからも推測されると思うが、りんごは食感を楽しむ程度ではない。ひたすらすり続け、果汁と果肉でびちょびちょになる。ポテトサラダからはポテトやマヨネーズの香りは一切せず、りんごのにおいしかしない。そのまま食べると美味なりんごも調理の仕方を間違えるとただ甘いだけのペーストになってしまう。もったいない。

その参、天ぷら

人参、玉ねぎ、ゴボウ、ちくわ。

天ぷら粉ににぼし。

うんうん、ばあちゃんその調子!と応援していたら、最後にやっぱりお決まりのさとうを出してきた。さすがに天ぷらにそこまで入れないだろうと高をくくっていたら、あっけなく裏切られた。

というか、期待通りだった。

天ぷらのタネに注がれる白い粉はあたり一面を埋め尽くした。その瞬間私は我慢の限界を迎え、覚悟を決めた。

「ばあちゃん、今後は私がご飯作るよ」

視線の強さと強い語気に私の本気を感じたのだろう。

「そうか」と一言。

それからというもの、私が料理している間、お猫様が私の邪魔にならないように「子守り」に徹することになった。

ばあちゃんは文句を言わず、私の料理を口にする。もともと大の甘党なばあちゃんからすると私の料理に「甘み」が足りないのかもしれない。それでも、家族からおかわりや、「美味しい」の言葉が出てくる度に私の支持率はアップし、無事台所の政権交代がなされた。ばあちゃんに我慢させるのは申し訳ないが、一家の健康のためにも必要な「痛み」だと思う。

私が外出して帰ってくると。ばあちゃんが台所に立っていた。

夕飯はカレー。口にするとやっぱり、まずい。

スプーンを置き、お茶漬けのもとへと走った。

全く、油断も隙もない。笑

フェアリーテイル

朝、ばあちゃんの味噌汁をすする。

うん、今日もまずい...

出汁も取らず、お湯に味噌を溶かしただけ。

自家製味噌を使っていると言っても、わが家の大豆を隣の麹屋さんに持って行って繕ってもらう。あとは放置するだけ。自分ではあまり手を加えて無い割には今年は出来が悪いと他人のせいにしたりする。

「農家のばあちゃんと言えば、長年蓄積された知恵で、地元の新鮮な野菜をその土地ならではの調理法で家族をもてなす」

これはテレビの話。ここではおとぎ話である。

朝食のごはんと味噌汁以外の昼と夕食作り一家6人分、私が一手に引き受けている。と言っても私はプロの料理人ではなく、普通のものをごく普通に作るだけ。簡単に作れるクリームシチューを目をキラキラさせながらすするじいちゃん。目にはうっすら涙。「おいしい、おいしい」とおかわりまでした。こんなにシンプルな料理でここまで感激。

「ここは戦時中なのか」

と、疑問さえ抱く。

どうやらこの家には「普通」が欠けていたよう。

数々のメニューをこしらえてきたばあちゃんだが、中でも特に衝撃的だったメニューは3つ。

その壱、カレー

「カレーをまずく作れるわけないじゃん」と思われるかもしれないが、わが家は「普通」ではない。

中辛だったカレールーを買ってきたはずなのに、

とにかく甘い。シロップ並みに甘い。

驚いてばあちゃんに、何を入れたのか聞くと悪びれる様子もなく、「さとうをしいた(入れた)だけ」と。それじゃ、「中辛の意味ないじゃん」と突っ込みたくなると同時にここまで甘さを出すには相当量の「さとうをしいた」に違いない。台所で砂糖の残量を確認するとさっき満杯に補充したはずのタッパーの半分近くがなくなっていた。

糖尿街道まっしぐらである。

つづく

ウィンタースポーツ

「はい、これ飲め!」

途中でばあちゃんが窓からりんごジュースを差し出す。

どんなに寒くても、じんわり汗がにじんでくる。体力も水分も奪われ、体はヘトヘト。雪寄せ(雪かき)は重労働であり、スポーツなのだ。

こっちでは「雪かき」ではなく、「雪寄せ」と言う。確かに雪をがっぽりつかんで邪魔にならないところへ移動させるのは、「かき」よりは「寄せ」という言葉の方がイメージに合っているかもしれない。

東京ではたったの数センチ降っただけで「大雪」と騒ぎ、交通機関は麻痺。私も1月の「大雪」の影響で、電車はおろか駅に入るまでに何時間も並んだ。いつもなら40分足らずの職場まで4時間かかった。たったの数センチで終日ニュースになるようなら、秋田をはじめ豪雪地帯のテレビは連日「大雪」のニュースで持越しだろう。たとえ10センチ、20センチ降っても、暴風雪の警報が出ても、「公立高校の倍率」などさすがは学力テスト全国一位の県!と感心するようなローカルニュースがながている。

先週の日曜日、横手市の浅舞にてスポーツ雪寄せの世界大会が開催された。

【ルールは簡単】

①1チーム3~5人

②競技時間90分(前半45分、後半45分)ハーフタイム30分

③横幅2.5メートルの雪を制限時間内に何メートル雪寄せできたか競う

④参加料2000円

今年も「世界新記録」で地元のチームが連覇を果たした。世界大会と言えども、参加国は日本だけ。 噂によると、オリンピック競技を目指しているらしい。

SUMOやKARATEの日本生まれのスポーツを並んで

「YUKIYOSE」

を見られる日は来るのだろうか。

話は戻って、雪寄せ歴70年の師匠指導のもと、わが家の雪寄せ大会はまだ続く。

東京の予報は晴れ。こうして、汗水たらしながら「太平洋側の分も雪寄せしている。私たちが東京の晴れを守っているんだ!」と妙な使命感に駆られ、やる気は最高潮。

頑張れ、未来のオリンピック候補。

喉を通るりんごジュースが体中に染みわたった。 

 

がっこさんの有効活用

燻製小屋が何棟も連なり、屋根の方は真っ黒。

香ばしいかおりがあたり一面を埋め尽くす。

スモーク大根。

すなわち、「いぶりがっこ」の工場である。

ご近所さんからいぶりがっこ用の大根を頼まれ、視察にやってきた。

 

いぶりがっこ」とは燻製したがっこ(漬物)のことである。

漬物として使う干し大根が凍ってしまうのを防ぐため、大根を囲炉裏の上につるして燻し、米ぬかで漬け込んだ雪国秋田の伝統的な漬物。同じ大根の漬物でも「たくあん」とは違ったうまみがある。噛めば噛むほど燻製の香りが口いっぱいに広がり、パリッパリッとした食感を楽しむことができる。ごはんのお供はもちろんのこと、お茶、日本酒、ワインなどにも実によく合う。燻製に使う木の種類、たとえば、桜やナラなどによって香りが変わってくるという。漬物全般が苦手な夫でも香ばしい香りと食感にすっかり虜になった。

いぶりがっこはまるまる一本真空パックで販売されているものが多いが、最近では小分けされたものや、食べきりパック。また、大根ではなくにんじんも販売されている。いぶりがっこそのものももちろん美味しいのだが、中でも、帰りに立ち寄った道の駅で販売していた「秋田いぶりがっこチップ」がおすすめ。

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いぶりがっこチップ」はいぶりがっこを薄くスライスして揚げたものでも、いぶりがっこの味だけするものでもない。馬鈴薯澱粉に細かくきざんだいぶりがっこを加え、油で揚げる。サクサクとした食感。口に入れたときにすぐ感じないが、噛んで行くとほのかにいぶりがっこを感じることができる。主張しすぎない、けれどもきちんと裏で主人を支えるよくできた奥さんというところだろうか。となりのおばちゃんは、あまった切りはしの有効活用だとも言う。

うん、うまい。

今度お土産に買おう。

工場の感想よりも、チップのことで頭いっぱいな帰り道。

 

たばごの時間

妊娠2か月目だが、毎日の「たばこ」は欠かせない。

 

6時半、朝食。

10時、たばこ。

11時半、昼食。

12時、昼寝。

15時、たばこ。

18時、夕食。

 

はじめてばあちゃんから「たばごにしねが?」と言われた時、私になんてとんでもないことを言うのだろうと驚いた。ところが、かれこれ30年以上知っているばあちゃんがたばこをふかしている姿を一度も見たことはない。もしや陰で隠れて・・・ワイルドなばあちゃんがたばこを吸う姿は想像できたけれど、どうも様子が違う。

電気ポット片手に棚の中のお菓子を両手いっぱい抱え、こたつへとやってきた。急須と湯呑をもって来いとの指令に従い、私は台所へと走った。一同揃うと、いよいよ「たばこの時間」が始まった。

 

「生ゴミをたい肥にするのはめんどくさいね」

「なんなら豚飼っちゃう?」

「昔飼ってた七面鳥の網が破られて何度も盗まれて大変だった」

 

などなど、農家ならではの会話が繰り広げられる。

 

農作業は夜明け前から始まる。特に夏場のスイカの収穫となれば、炎天下の中、重いスイカを抱えかなりの重労働となる。それを避けるために4時ごろには作業を開始。2時間ほど作業をしたら朝食、2時間作業して休憩、その繰り返し。昔の人は休憩中、たばこをふかしていたしたことから、「たばこ」≒「休憩」≒「おやつ」に転じたのではないかと勝手に推測してみる。現にシーズン中であれば畑の至る所で「たばご」しているトラクターやコンバインを止めてはくつろぐ農民たちの姿を見ることができる。

ところが季節は冬。日中、雪かき以外はほとんど出歩かない。それなのにハイシーズンばりのカロリーをどんどん接種していく。

今日のメインは米粉にあずきとすりおろしたリンゴをまぜて揚げたばあちゃん特製あげまんじゅう。まんじゅうの下からきらりと光る油。疑いの目で手を伸ばすがほおばってみると実に美味である。もっちりとして、噛んでいくとりんごの香りが口の中に広がる。そして、あずきが良いアクセントとなっている。市販のまんじゅうに天ぷらの衣をくぐらせカリッとあげたものも定番。気づけば、お茶、まんじゅう、せんべいの間のサイクルにはまってしまう。

一抹の不安が脳裏をよぎった...

このままでは私自身が、飼っている豚になるのではないかと。

オリンピック女のリフォーム大作戦

玄関を入って廊下の一番奥の和室に私たち夫婦は間借りしている。

築40年経つこの家は10LDK。ばあちゃんの膝が悪くなってトイレを和式から洋式にリフォームした以外に、人の手が加えられていない。新築された当初は大邸宅だったこの家も、台所のあり様からも分かるように無法地帯化されていた。

和室の京壁にはカビでできた黒いシミ。畳は一度も交換されていない。かつては、祖父母が使っていたが、トイレまでの距離が遠いとの理由ですっかり物置となり、せっかくの10畳にはひたすらたんすとスキーが無造作に置かれている状態。そんな荒れ果てた邸宅にやってきた私たちは、まず自分たちの使うお部屋から手直ししていくことにした。

 

今流行りのDIYである。

 

まずは壁。一階の角部屋で暗い印象を払拭すべく、壁の上から直接塗れる漆喰を購入。「うま~くヌレール」は漆喰ながら容器から出せばすぐに使える。水を加え、コネコネする手間がない。そして何より、手で塗ることもできる!よく左官職人さんが使っているようなコテを使う必要がない。

お部屋の湿度の調整、消臭、防カビ効果もある上、光の反射をしてお部屋を明るく照らしてくれる。何とも人にやさしい素材なのだ。全部で12色、チューブタイプから5kg,18kgと用途に合わせて注文することができる。

 

中学生の頃、美術の課題で自画像を描くことになった。

全くもって絵心の無い私の自画像は気づけば隣のクラスの北さんの顔になっていた。また、技術の授業では半田ごてで導線をつなげ、ランプを作った。手先が不器用すぎる私はうまくできずに放課後居残り。配線がつながったか確認したかった私は、プラグを電源にさして感電。手の産毛はすべて燃え、駆け寄ってきた先生には「4年に一度いるんだよな、こういう奴」とオリンピックのレッテルを貼られてしまった。それに驚くなかれ、感電したのは人生で3度ほどある。手先は不器用な上に危機管理がなっていない子供だった。そんな不器用でセンスの無い私にも楽々塗れる漆喰に感動してしまった。

 

夫と二人、漆喰を塗り続けること3日。やさしいクリーム色でカフェ風の空間ができあがった。

さすがの床はぶきっちょ二人では対応しきれなかったため、地元の大工さんにお願いした。ふすまと押入れ、クリーム色の壁と、木目調の床がちぐはぐながらもち不思議と調和している。それまでの暗いイメージから一転。

私たちだけの癒しの空間が完成した。