となりのにんじん
あったはずのにんじんが無い。
冷蔵庫をくまなく探してもやっぱりない。
意を決してばあちゃんは言う
「となりの○○さんにかりてくる!」
華麗に割烹着を脱ぎ捨て、軽やかな足取りで外へ。ものの数分後、無事ににんじんをゲットして帰ってきた。
翌日、スーパーでにんじんを仕入れ、主へお届けする。
任務完了。
都会でにんじんが無かった時の対処法は2つ。
- コンビニへ走る
- 潔くあきらめ、代替メニューを考える。
しかし、この集落には徒歩圏内にコンビニは無く、みな、あきらめが悪い。
そして何より、ここでは助け合いの文化が健在だ。
わが家のお隣さんは早くにご家族を亡くし、雪深いこの地域に女手一人生活をしている。そのため、雪かきもままならない。わが家かそのさらにお隣さんが除雪機を出動させ、一役買っている。だから、にんじんの一本や二本くらい容易い御用とすぐに貸してくれる。
去年のお米の収穫期に叔父がアキレス腱を負傷。
コンバイン(稲を刈る機械)を動かせる人がおらず、大騒ぎに。
そんな中ご近所さんが代役を買って出てくれた。ただでさえ収穫の最盛期で自分の稲を刈るだけでも手一杯。田んぼ一枚刈るには天候と稲の乾き具合にもよるが、だいたい3~4時間くらいだろうか。それに一枚だけではない。何十枚もある。来る日も来る日も貴重な時間を割いてくれた。後から聞いた話によると、何年か前にご近所さんは足を骨折し、コンバインを運転できなくなってしまった。そこで、うちの叔父が代わりに田んぼを刈ったことがあったという。今回はそのお返しとでも言ったところだろうか。
ここでも「となりのにんじん」が一役買ったようだ。